立憲民主党はなぜ『選択的夫婦別姓実現』に躍起になっているのか…

国会では『選択的夫婦別姓』を一気に法制化しようとする流れになっています。他に議論しなければならない課題が山ほどあるにも関わらずです。特に立民は『選択的夫婦別姓』に集中し、躍起になっています。国民民主党にお株を奪われて必死になっているのでしょうか。もしかしたら隠された真の目的があるのかもしれない…。今回は立民の目的について考察したいと思います。
近藤倫子 2024.12.16
誰でも

 「選択的夫婦別姓」、最近ではこの言葉を目にしない日はないと言って良いほどに新聞等の報道に溢れかえっています。かく言う私も毎日Xで「#選択的夫婦別姓は強制的親子別姓」「#選択的夫婦別姓に反対」として投稿していますので、この記事をご覧くださっている皆さんも私のX投稿で目にしていると思います。

 かつてはここまで盛り上がっていなかった選択的夫婦別姓ですが、今年の9月27日に行われた自民党の総理総裁選にて、候補者の一人だった小泉進次郎議員が総裁選の論点として取り上げた事に端を発しています。石破茂議員(当時)も「やらない理由が分からない」と発言し、各種マスコミが候補者への質問として「選択的夫婦別姓」を取り上げるようになりました。この「選択的夫婦別姓」、一体どんな経緯を辿って、国民の関心を引くようになったのでしょう。少し振り返ってみたいと思います。

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 法務省HP「選択的夫婦別氏制度について」を見ますと、法務省では平成3(1991)年に法制審議会の議題として上がっている事がわかります。今から33年前です。またその後も平成8(1996)年、平成22(2010)年と選択的夫婦別氏制度への改正法案を準備したが、当時は国民各層に様々な意見があり国会に提出するには至らなかったと記載されています(検討経過等参照)。この期間に高市早苗議員が当時の自民党政調会の法務部会に「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」を提出しています(平成14(2002)年。出典『日本を守る強く豊かに』、高市早苗、WAC、2024、P184)。

 この法案は「戸籍上の夫婦親子の氏が同一であること(ファミリー・ネーム)は維持しつつ、婚姻前の氏を通称として称する旨の申し出をした者について、国、地方公共団体、事業者、公私の団体は、婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有する」としたものです。この案は当時の法務部会では強烈な反対意見が出て党議決定には至らなかった、と書いてあります。当時は旧姓の通称使用ではなく、戸籍の姓も住所も別々にするべきだ、との意見が出たとありますので、かなり危険な状態であったと推測できます。ファミリー・ネームの消失一歩手前だったのでしょう。その後高市議員は同じ法案を令和2(2020)年に自民党政調会法務部会に提出していますが、議論もされずに放置されていると書いています。令和2(2020)年12月での法務省及び男女参画局では、夫婦の氏の関する問題については、具体的な制度の在り方に関し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進めること、となっています。

 男女平等の名の下に男女共同参画が進められ、女性が男性と同じように働く機会が増えました。女子の4年生大学の進学率も上がり経団連は「婚姻後の旧姓の通称使用拡大」を推進していました。 

経団連のHPに、選択的夫婦別姓(氏)に関する一連の流れがまとめてあるページがあるので参照します。経団連のHP の該当URLです↓

注目したいのは経団連もかつては「婚姻後の旧姓の通称使用拡大」を推進していたと言う部分です、スクショを貼ります。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html#:~:text=%EF%BC%93%EF%BC%8E%E6%97%A7%E5%A7%93%E3%81%AE,%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html#:~:text=%EF%BC%93%EF%BC%8E%E6%97%A7%E5%A7%93%E3%81%AE,%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

男女共同参画や女性の活躍推進等により、経団連が旧姓の通称使用を後押ししていた事がこれで分かります。令和6年現在では320ある国家資格と免許のうち317が旧姓の通称使用または併記使用を認めています。運転免許証もパスポートも旧姓を併記使用できますし、会社で働く際にも婚姻後は旧姓を使用できます。本日(12/15)私がXに投稿した金融機関に関する旧姓の使用についても、銀行の約7割、信用金庫の約6割が旧姓名義での口座開設に対応しています。

https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20220906/01.pdf

https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20220906/01.pdf

このように、婚姻前の旧姓を通称使用できるようになり、推進派のいう「日常生活の不便」はほとんど無いと言えます。しかし令和6年6月に公表された経団連の提言書では、「選択的夫婦別姓制度を実現せよ」と政府への要望として書いています。旧姓の通称使用の機会が拡大され、事実上困っている既婚者はいないと言うのに、夫婦別姓制度を実現しようとする人達は諦めません、なぜでしょうか。

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『選択的夫婦別姓 これからの結婚のために考える、名前の問題』(寺原真希子、三浦徹也、岩波ブックレット、2024)を参考にします。まず岩波ブックレットですが、岩波書店が出しているブックレットですので、いわゆるリベラル側の視点で書いてある本です。著者である寺原真希子氏は人権派弁護士として活躍している女性の方で、以前私がデイリーWiLL水曜ライブ内で取り上げた『しんぶん赤旗』紙面に登場している方です。(該当ライブのURL↓)

寺原さんは「すべての人の尊厳を守る」として同性婚問題や選択的夫婦別姓問題に関わっていて、選択的夫婦別姓訴訟弁護団の団長を務めています。もう一人の著者である三浦徹也さんも弁護士で、選択的夫婦別姓訴訟弁護団の事務局長を務めています。推進派の主張を知るには最適な一冊だと言えます。

この本は第一章と第二章からなり、第一章では三浦弁護士が選択的夫婦別姓の必要性について書いており、第二章では寺原弁護士が担当した訴訟について書いています。私は第一章に着目しました。この中で書かれている「選択的夫婦別姓の必要性」はアイデンティティの喪失に関わるから、とはっきりと書いてあります。

ここで確認しておきたい事実があります、それは現行法のもとでは婚姻する二人は夫の姓を名乗るか、妻の姓を名乗るか、すでに選択できていると言う事です。夫となる男性も妻となる女性も、それぞれ自分の意志に従って選択しているのです、選択的夫婦同姓であるという事実です。例えば夫になる人が鈴木さんで、妻になる人が佐藤さんだとしましょう。結婚の話になった時、どちらの姓を名乗るかについてじっくりと話すカップルはいないかもしれません、なぜなら夫婦同姓が当たり前の感覚で、普通の女性は「無理やり改姓させられる」なんて思わないので、自然と鈴木姓になることを選択するでしょう。女性側に特別な事情がある場合は、それを鈴木さんに伝え佐藤姓になって欲しいと伝えるでしょう。もしこの姓に関する話題で決裂したならば、結婚には至りませんし、心から愛する二人なら結婚という目的に向かってどちらの姓を選択するか、お互いの意思を尊重して話し合いを重ねるでしょう。

しかしこの本の中では、そういった話し合いが無いという前提で進んでいきます。女性が「改姓させられている」という筋で論を構築しています。根底には「女性差別」や「女性が抑圧されている」というリベラル側の思考があります。既婚女性の95%が夫の姓を選択している現状についても「多くの女性が夫の姓に改姓させられている」と表現しています。果たしてそれは事実なのでしょうか。

確かに多くの女性が夫の姓を選択していますが、「改姓させられた」なんて被害者意識を持つ既婚女性に、私は会った事がありません。以前の仕事柄さまざまな事情を抱えた方とお話しする機会がありました、守秘義務があるので詳細は書けませんが、例えばDV被害を受けている既婚女性やすでに離婚された女性。それでも「改姓させられた」との言葉は聞いたことがありませんでした。好きだったから、同じ名字になりたかった…とのお話しならたくさん聞きました。もちろん私も彼女達もDVを許容している訳ではありません、そんな夫だったけれども婚姻時に「改姓させられた」との思いは持っていなかったという事です。

次にこの本の中で書かれている理由として「アイデンティティの喪失感」が出てきます。アイデンティティ、自我、。発達心理学でいうところの「自分とは何者なのかという問いに対する答え」です。

「自分とは一体なんなんだろう」、この問いは青年期の大きな課題となります。環境の変化や体の発育による変化、思春期でもありますから自己の存在理由など、「自分」にまつわる事で悩む時期です、顔や体型や成績や家庭の環境や、とにかく色んなことで悩む時期です。その時期を経て「自分とはこういう存在なんだ」と導き出した答えが「アイデンティティ」であり「自我」です。自分自身に対する誇りとも言えます。

このアイデンティティですが、たった一つの要素で成り立っている訳ではありません。皆さんも一緒に考えて頂きたいのですが、「あなたは何者ですか?」と聞かれた時、「私は日本人です」や「私は日本人女性(日本人男性)です」や、「私は◯◯です」といった幾つもの要素が出てくると思います。それらを統合してアイデンティティとなるのですが、氏名にだけアイデンティティを感じるというのは私は少し違和感を覚えます。仮に本当に氏名にアイデンティティを持っているのなら、なおさら婚姻時に配偶者になる方と話し合えばいいのに…と思いますが、私は名前にこそアイデンティティを持っているほうが自然なのでは無いかと考えています。名前には名付けてくれた両親や祖父母の願いが込められています。友人関係では名前で呼ばれると姓で呼ばれるより親しみを感じたり、恋人関係においても名前で呼び合うことにより親密さが増すこともあります。自分らしさを象徴するのが名前なのでは無いでしょうか。

自分が育った家庭、家族を表すファミリー・ネームとしての姓に誇りと喜びを感じる気持ちも理解できます、だからこそ婚姻時にしっかりと夫となる人と話し合いをする必要があるでしょう。それができない理由はなんでしょうか。「あなたの姓ではなく私の姓を名乗ってほしい」と話し合いができない関係性なら、夫婦として長く続かないでしょう。現状では妻の姓を選択し改姓した男性もいます。人数は少ないですが、喜んで妻の姓を選択した男性がほとんどです。

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立民も現在では「アイデンティティの喪失」を夫婦別姓制度実現の理由にしていますが、それは後付けであることが立民の資料から判明しました。

https://cdp-japan.jp/news/20210707_1758

https://cdp-japan.jp/news/20210707_1758

令和4(2022)年6月8日に更新された立民の政策解説ページ『立憲民主党は選択的夫婦別姓の実現を目指します』の資料8から引用しました。

目指す理由で一番多い回答が「夫婦別姓を通すため」、選択的夫婦別姓の実現を目指す理由が「夫婦別姓を通すため」、問いに対する答えになっていないと個人的には思いますが、とにかく何がなんでも夫婦別姓をやりたいんだ!という意気込みが感じられます。理由なんてないのです、立民は何がなんでも夫婦別姓が可能となる婚姻制度に変えたいのです。

二番目に回答数の多いものが、「戸籍制度に反対」、おそらく立民の真の目的であろうと推測されます。

興味深いことに、この設問には「アイデンティティの喪失」がないのです。選択的夫婦別姓の実現を目指す理由は?の設問に「アイデンティティの喪失」が存在しないという事は、この調査を党内で行なった令和4年当時には「アイデンティティの喪失となるから、選択的夫婦別姓を実現する」との考えがなかった、と断言できます。後付けである証拠です。

そしてこの設問、「性関係はプライベートなことなので、国に届ける必要性を感じない」だの「いつでも一方の意思で関係を解消できる」だの、およそ日本人の常識では考えられないものまであって、立民の党員が何を考えているのか可視化できますね、興味深いです。

この資料は立民HPで全部見れますので、興味のある方はぜひ目を通してみてください。

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選択的夫婦別姓に明確に反対の声をあげている国政政党は日本保守党と参政党だけです。先の衆院選で大人気となった国民民主党は選択的夫婦別姓に賛成の立場をとっています。自民党内も一部の保守系議員を除いて賛成の声をあげています。対して国民の約7割は反対しています(こちらの調査結果は以前のメルマガで出していますので、今回は割愛いたします)。中高生も約9割が反対している選択的夫婦別姓、なぜ国会議員たちは強引に法制化しようとしているのでしょか。立民が企む戸籍制度の破壊、これが実現されてしまったら私たち日本人の先祖とのルーツが絶たれてしまいます。相続の問題が発生した時に誰が血縁関係にあるのか親戚がどこまで存在しているのか、嫡出子と非嫡出子の見分けがつかない等々…非常に重大な社会混乱が起きると予想されます。

嫡出子と非嫡出子の問題に関しては、今年令和6年4月にこんな法改正がありました。

https://www.moj.go.jp/content/001413652.pdf

https://www.moj.go.jp/content/001413652.pdf

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00315.html

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00315.html

いわゆる300日問題が解消された、という事です。女性は離婚後半年間は再婚ができない規定がありましたが、これを改正により離婚後にすぐ再婚できるようにし、前夫の子供を再婚後の夫の子供として戸籍に表記できるようになりました。これで無戸籍児がいなくなるとしていますが、本当にそれでいいのでしょうか。要は夫のいる女性が不倫関係にあった相手の子供を妊娠して、夫と離婚しても翌日には再婚が可能となり、再婚相手の子供として前夫のDNAを持つ子供を再婚相手の子供として届け出る事が可能となった、という事です。これも戸籍制度の問題であると17年ほど前から人権派弁護士が騒いでいました。女性だけ離婚後に半年間再婚できないのは女性差別だ、前夫と婚姻関係にある期間に夫以外の男性と関係を持ち孕った場合、半年間は再婚できない、300日間経たないと再婚相手の籍に子供を入籍する事ができない、これは基本的人権の侵害だ、と言っていました。当時私は第二子を孕ったばかりでしたので、人権派弁護士たちのこの言い分に違和感を覚えました。不倫したのに?そもそも不倫したのに?妊娠して困っているから民法を改正しろ?なんて道徳感のないニトたちなんだろうとビックリ仰天したものでした。

https://www.moj.go.jp/MINJI/faq.html#:~:text=%E5%85%AC%E8%A8%BC%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE-,%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%E3%82%89,-%E3%80%81%E5%87%BA%E7%94%9F%E5%B1%8A%E6%9B%B8

https://www.moj.go.jp/MINJI/faq.html#:~:text=%E5%85%AC%E8%A8%BC%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE-,%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%E3%82%89,-%E3%80%81%E5%87%BA%E7%94%9F%E5%B1%8A%E6%9B%B8

この問題もよくよく考えると、戸籍制度がなくなれば煩わしさが解消しますよね。そもそもリベラルを標榜する人達は、家族という関係性を「家族制度」と呼び、家族なんてものは無くなればいいと言っています。その代表例が上野千鶴子氏であり田嶋陽子氏です。田嶋氏はかつて社民党で国会議員をしていた方です。上野氏に関しては言わずもがなですね。そんな人達と同じ思想を持つ人権派弁護士や立民が、選択的夫婦別姓制度の実現に躍起になり、それと呼応するように着々と民法の改正が進んでいる。家族を壊したい人達と戸籍をなくしたい人達、目指しているゴールは同じだと言っていいでしょう。

平成の時代から戸籍や家族や婚姻に関する民法改正が立て続けに起きています。女性が離婚しやすくなったのも、法改正があったからです。離婚しやすくなり女性の生き方の一つに「シングルマザー」が加わり、母子家庭や未婚の母親等、昭和までの価値観では考えられない多様な家族の形が登場しました。子供の存在は、そこにあるのでしょうか。離婚したい女性、母親は昭和の時代にも存在していましたが「子供のため」と思い耐え忍んでいた女性がいました。自分も辛いが子供はもっと辛いだろう、だから子供が大きくなるまでは耐え忍ぶという母親としての思いが、いつしか否定されるようになりました。自分らしさ、女性としての自分、女らしく、それらの言葉の中には子供に対する愛情は全く感じられません。無戸籍児にしたくない思いは一見すると母としての愛情に感じられますが、不倫関係で妊娠するというのは母親以前に日本人女性としての道徳感、倫理観に悖る行いです。そもそもそんな行為をしたらいけません。以前、野党の女性議員に、「女にも、男と同じように不倫を楽しむ権利がある」といった主旨の発言をした方がいましたね。その女性議員も確か立民だったような…。

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今回は選択的夫婦別姓について、いくつかの資料や本を元にして私見を書いてみました。子供の権利の侵害につながる強制的親子別姓には断固として反対の立場ですが、夫婦別姓の危険性や真の狙いを考えてみることも大切です。いよいよ彼らの狙いがはっきりしてきたのではないでしょうか。

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いつもの銀座の観音山フルーツパーラーの苺パフェ。今年も苺の季節が到来しました。

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🔳近藤倫子(こんどうりんこ)1975年生、日本女子大学卒。児童家庭支援士、著述家。月刊WiLL、Gakken、展転社等での執筆と連載。夕刊フジへの寄稿。デイリーWiLLをはじめとするネット番組多数出演。子供の心の発達に関する講演、子育てや日本を伝える講演会も多数登壇。

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